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幸徳秋水
画像:KotokuShusui.jpg 幸徳 秋水(こうとく しゅうすい、明治4年9月23日(1871年11月5日) - 明治44年(1911年)1月24日)は、明治時代のジャーナリスト、思想家、社会主義者、アナキスト。本名は、幸徳傳次郎。秋水は、師にあたる中江兆民から与えられたもの。大逆事件で処刑された12名の1人。
経歴
高知県幡多郡中村町(現在の高知県四万十市)に生まれる。幸徳家は、酒造業と薬種業を営む町の有力者で、元々は「幸徳井(かでい)」という姓で、陰陽道をよくする陰陽師の家であった。なお、妻の父は幕末の尊王攘夷運動で活躍し、足利三代木像梟首事件の首謀者とされている国学者の師岡正胤である。
明治20年(1887年)に上京し、同郷の中江兆民の門弟となる。新聞記者をめざし、『自由新聞』などに勤めた。明治31年(1898年)より『万朝報』記者となる。
国民英学会などで学び、明治33年(1900年)8月30日、旧自由党系政党の憲政党がかつての政敵である藩閥の伊藤博文と結び立憲政友会を結成したことを受け、万朝報に「嗚呼自由党死すや」と書き記した「自由党を祭る文」と題した批判論文を発表した。
明治34年(1901年)、『廿世紀之怪物帝国主義』を刊行し帝国主義を道徳的な見地から批判。これは当時、国際的に見ても先進的なものであった。また、この年田中正造が足尾銅山鉱毒事件について明治天皇に直訴したときの直訴状は、まず幸徳が書き、田中が手を加えたものである(田中が直訴状の執筆を依頼した者たちが後難をおそれてしりごみする中、幸徳だけが断らずに書いたといわれる)。
明治36年(1903年)、日露戦争開戦直前、ロシアとの開戦へと世論の空気が押されていくなかで、『万朝報』も社論を非戦論から開戦論へと転換させたため、盟友の堺利彦、キリスト教徒の内村鑑三と共に発行元の朝報社を退社する。幸徳と堺は非戦論を訴えつづけるために平民社を開業し、週刊『平民新聞』を創刊した。
明治38年(1905年)に渡米し、クロポトキンなどの影響を受け、無政府主義に傾く。こうして伝統的権威を否定し、労働者による直接行動を提唱するようになった。
明治43年(1910年)6月、「大逆事件(幸徳事件)」において逮捕。翌年に死刑判決を受け、他の死刑囚とともに異例の早さで処刑された。これには当時すでに国内や海外の一部から批判があり、社会主義者たちを一網打尽にしたかった当局が仕組んだ謀略である、というのが現在ではほぼ定説になっている。(厳密には管野須賀子ら数名による皇族暗殺計画の準備はあったといえるので、全てが事実無根の謀略というわけではない。しかし、幸徳ら無関係の人間が多数死刑になったことは、重大な冤罪といえる)
評価
1960年代頃より新資料などが発見されて以来、大量の研究書が発表されており、大逆事件(幸徳事件)は国家によるフレームアップの典型例であることは確実となった。批評家柄谷行人や浅田彰、すが秀実らは大逆事件を大日本帝国(日本帝国主義)の重大なメルクマールとしてみなし、その波及効果を研究している。ほかユニークな評価としては批評家の福田和也が愛国者として秋水を評価するものがある[1]。
著作史料
- 飛鳥井雅道編・解説『幸徳秋水集』(『近代日本思想大系』第13巻)、筑摩書房、1975年11月。
- 伊藤整編『幸徳秋水』(『日本の名著』第44巻)、中央公論社、1970年9月。
- 大逆事件の真実をあきらかにする会編『大逆帖-堺氏蔵』、大逆事件の真実をあきらかにする会、1981年1月。
- 塩田庄兵衛編『幸徳秋水の日記と書簡』増補決定版、未來社、1990年4月。
- 中島及『幸徳秋水漢詩評釈』、高知市民図書館、1978年3月。
- 山泉進編・解題『幸徳秋水』(平民社資料センター監修『平民社百年コレクション』第1巻)、論創社、2002年10月。ISBN 4-8460-0353-1
- 『幸徳秋水文集』(『解放群書』 第7編)、解放社、1926年。
- 『幸徳秋水集』(『改造文庫覆刻版』第1期)、改造図書出版販売、1977年2月。
- 幸徳秋水全集編集委員会編『幸徳秋水全集』全9巻・別巻2巻・補巻、明治文献、1968年-1972年。
- 山泉進校注『帝国主義』(『岩波文庫』青版125-1)、岩波書店、2004年6月。ISBN 4-00-331251-1
参考文献
- 秋山清・大沢正道『幸徳・大杉・石川-日本アナキストの原像』、北日本出版社、1971年。
- 飛鳥井雅道『幸徳秋水-直接行動論の源流』(『中公新書』193)、中央公論社、1969年6月。
- 絲屋寿雄著『幸徳秋水伝』、三一書房、1950年。
- 絲屋寿雄著『幸徳秋水研究』、青木書店、1967年。
- 絲屋寿雄著『幸徳秋水』(『Century books』『人と思想』)、清水書院、1973年。
- 絲屋寿雄『幸徳秋水研究』増訂版(吉田精一監修『近代作家研究叢書』53)、日本図書センター、1987年10月。
- 大河内一男『幸徳秋水と片山潜-明治の社会主義』(『講談社現代新書』)、講談社、1972年。
- 大野みち代編『幸徳秋水』(『人物書誌大系』3)、日外アソシエーツ、1982年6月。
- 大原慧『幸徳秋水の思想と大逆事件』、青木書店、1977年6月。
- 神崎清『実録幸徳秋水』、読売新聞社、1971年。
- 坂本武人『幸徳秋水-明治社会主義のシンボル』(『センチュリーブックス』・『人と歴史シリーズ』日本36)、清水書院、1972年。
- 坂本武人『幸徳秋水-明治社会主義の一等星』(『清水新書』)、清水書院、1984年10月。
- 塩田庄兵衛『幸徳秋水』(『新日本新書』)、新日本出版社、1993年6月。
- 田中惣五郎『幸徳秋水 一革命家の思想と生涯』(『人物評伝三部作』)、三一書房、1971年。
- 西尾陽太郎『幸徳秋水』(日本歴史学会編『人物叢書』新装版)、吉川弘文館、1987年5月
- F・G・ノートヘルファー(竹山護夫訳)『幸徳秋水-日本の急進主義者の肖像』、福村出版、1980年2月。
- 林茂『近代日本の思想家たち-中江兆民、幸徳秋水、吉野作造』(『岩波新書』)、岩波書店、1958年
- 師岡千代子『夫・幸徳秋水の思ひ出』、東洋堂、1946年
- 師岡千代子『風々雨々-幸徳秋水と周囲の人々』、隆文堂、1947年
- 山泉進「社会主義と社会進化論-幸徳秋水」、野田又夫・田丸徳善・峰島旭雄編著『近代日本思想の軌跡-西洋との出会い』、北樹出版、1982年4月。
- 山泉進「幸徳秋水のなかのアナーキズム-自由思想と大逆と」、『現代思想』第32巻第6号(特集=アナーキズム)、2004年5月。
- 渡辺順三編『十二人の死刑囚 大逆事件の人々』、新興出版社、1956年
脚注
- ↑ 福田和也『余は如何にしてナショナリストになりし乎』光文社pp.92-96